OFFICIAL

  • Twitter
  • Facebook
  • Instagram

戦場記者 A Conflict Zone Reporter

日本人特派員・須賀川拓 彼の瞳がうつしだすものは―――。

ガザ、ウクライナ、アフガニスタン、今世界で起きている危機

絶賛上映中

OFFICIAL

  • Twitter
  • Facebook
  • Instagram
  • NEWS お知らせ
  • THEATER 劇場情報
  • 期待&感想投稿キャンペーン
  • 初日舞台挨拶決定

MOVIE

  • 赤ペン瀧川が解説!
  • ">
  • 予告
  • 太田光 メッセージコメント
  • 15秒スポット
  • 30秒特別映像

INTRODUCTION

日本人特派員が見た
“ニュースを超える”戦争の真実

情報が氾濫する社会で、日々のニュースの波に押し流され埋もれていく真実。TBSテレビ特派員にして、今やYouTubeでも注目を集める“戦場記者”須賀川拓。
須賀川が抜群の行動力と分析力でガザ、ウクライナ、アフガニスタン、戦地を徹底的に歩き、人々を見つめ、浮かび上がらせる戦地のリアルは、私たちに「対岸の火事ではない」戦争の残酷な現実を突きつける。激動と混沌の時代に生きる私たちが今観るべきドキュメンタリー映画が誕生した。

テレビの枠に収まらない新時代のジャーナリストの八面六臂

遠くはウクライナから、近くは北朝鮮、台湾海峡をめぐる緊張まで、多くの人が戦争の危機を実感した激動と混沌の2022年。本作は、世界の紛争地を飛び回ってきた日本人記者の視点から“戦場の今”を映し出す。
『戦場記者』は2022年3月に開催したTBSドキュメンタリー映画祭で上映された「戦争の狂気 中東特派員が見たガザ紛争の現実」を基に、更なる取材を重ね、様々な地域から発信した戦場レポートを追加している。
監督は、TBSテレビに在籍し、現在ロンドンを拠点に世界中を飛び回る特派員・須賀川拓。JNN中東支局長というポジションながら、中東はもとより、ヨーロッパ、アフリカ、アジアと地球の約1/3という驚異的な広さのエリアをカバーしている。

「戦争に白黒はない」と、常に反対側からの視線も忘れない須賀川。彼は報道時間の制限ゆえに戦争の現実をごく一部しか報じられないテレビ報道の枠を超え、YouTubeやSNSも駆使して戦地の肌感覚とニュースの向こうに広がる光景や真実を、危険エリアから撮影クルーと共に日本の視聴者に届けてくる。スピード感溢れる怒涛のレポート、ホンモノの紛争地のヒリヒリした緊張感を伝える語り、筋書きのない意外性に満ちたYouTube配信は、従来のニュースファンだけでなく若い視聴者も取り込み、平均30万回再生以上の人気コンテンツとなっている。彼のチャレンジはテレビジャーナリズムの新しいカタチと言えよう。

フェイクニュースが横行する世界
日本から遠く離れた現場で
事実を目撃している
ひとりの日本人がいる―。

戦争が続くウクライナでは、クラスター弾が降り注ぐ南部の街ミコライウの住民や、ロシア軍の占拠で放射能汚染のリスクが激増したチョルノービリ原発の職員に取材し、ロシアのプーチン大統領が「ネオナチからの解放作戦」と主張する“軍事作戦”が、紛れもない侵略・破壊行為であることを示した。本作は、普段我々が触れる国際ニュースだけでは知りえない、圧倒的なリアル、真実を映し出す。
また、普段テレビや動画では見られない“平時”の須賀川に、権威ある「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞したスター記者の葛藤や、戦地に足を運び続ける思いも語らせる。

彼は異国の地で何を感じ、何を考え、何を我々に伝えようとしているのか?
我々が住む日本から遠く離れた現場で悪戦苦闘するひとりの日本人の瞳に映るものとは一。

戦場レポート

日本人特派員・須賀川拓。
彼の瞳に映るものとは—。
須賀川拓の紛争地レポートの特徴は、徹底して住民目線であること。そこに幅広い兵器関連の知識に基づく解説を加えることで、戦地の残酷な現実を伝える。一方で、「専門分野は専門家の解説が一番」というスタンスは崩さない。現場にいるからこそ見聞き出来る証拠や証言を集め、かみ砕いて伝えることが最も大切だと話す。

  1. 閉ざされた街ガザの恐怖
    GAZA いつ衝突が終わるのかも分からないパレスチナ。中でもイスラエルによって封鎖された街ガザは、イスラエルに対する憎悪に加え、実効支配するイスラム組織への不満もくすぶる極めて複雑な場所だ。イスラエル軍による日常的な空爆にさらされる狭小な街に、200万人を超える人たちが生活している。家を破壊され、家族や友人など大切な人を失う恐怖。それでもそこに住む人たちは日々を生きている。多くの場合、指導者たちによる“正義”のぶつかり合いで始まる戦争。しかし実際に日常や未来を奪われ、命を失う人の多くはそうした指導層ではなく一般市民だ。

    夜。
    地上8階から見渡すと、街が見事なまでに“半分”に割れていることに気が付く。200万人が住むこの場所は電気が満足にいきわたらず、街の半分は停電して暗闇に包まれるのだ。ぽつりぽつりと蛍のように見える灯かりは昼間の太陽光で充電したバッテリーでかろうじて灯される小さな電球たちだ。

    窓を開けると、近くでケバブを売る青年の声が聞こえてきた。焼けた羊肉の香ばしい匂いが煙とともにゆっくりと部屋に流れ込んできて、地中海独特の湿った、そして埃っぽい空気と混ざりあい体にまとわりつく。「ハラ減ったな」取材中なのに余計なことを考える。

    それにしても暗く、何も見えない。じっとしていると、五感が研ぎ澄まされるのが分かる。真っ暗な空から不気味な唸るような音が聞こえてきた。赤外線カメラを備えた、軍用ドローンのプロペラ音だ。仮にカメラがこちらを向いていれば、遠く離れたイスラエル軍のコントロールセンターの画面で、窓から出ている私の顔が認識されているはずだ。この建物に標的がいると判断されたらミサイルを撃ち込まれるのだろうか。ぼんやりとそんなことを考えていたら、家主のアハマドさんが声をかけてきた。「ご飯を作るので食べていきませんか」。暗い居間に敷かれたカーペットに、質素な料理が並べられていた。

    パレスチナ暫定自治区ガザ。この街に住んでいる人たちは、極めて貧しい生活を強いられながらも客人に対して最大限のもてなしをする。イスラエルによる封鎖で、空から監視されるだけでなく人や物の行き来が極端に制限され、「天井の無い監獄」と呼ばれていても、である。

    戦争が日常でもあるこの街に生きる家族たちには、ある鉄則がある。それは、ジェット機の音が聞こえ始めたら最も頑丈な柱の近くに集まり家族全員で手をつなぐこと、もしくは、子供たちを一人ずつ別の部屋に向かわせることだ。

    イスラエル空軍の戦闘機が投下する1000ポンド爆弾の威力は想像を絶する。厚さ1cm以上はある金属製の部品は、激しい爆発によって45度の角度で割ける。小さなノコギリのような刃物に変わった無数の破片は、秒速3000kmという途方もないスピードで飛散する。当たれはほとんどの場合即死だ。

    母親たちは長い戦争を経て、空爆がいかに簡単に命を奪うかを知っている。だからこそ、鉄則があるのだ。家族全員で手を繋ぎ、皆一緒に死ぬか。それとも、子供たちを別の部屋に向かわせ、一人でも生き延びることに懸けるのである。

    ここまで読んだ多くの人は思うだろう。イスラエルこそが悪で、パレスチナが被害者なのだと。でもこの問題は、そんなに簡単に白黒つけられるものではない。イスラエルに無差別攻撃を仕掛けるパレスチナの武装組織も、戦争犯罪の当事者だ。戦争が長引けば長引くほど、お互いが掲げる“正義”は政治的な色を帯び住んでいる人たちの息遣いや思いが見えづらくなっていく。だから私は現場を歩く。そこに住んでいる人の声を徹底的に聞き、そのうえで双方のリーダーに攻撃の正当性を問いただす。

  2. 現場で目撃、
    紛れもないロシアによる
    ウクライナ侵攻の証拠
    UKRAINE ロシアのプーチン大統領が「ネオナチ制圧作戦だ」と主張するウクライナヘの侵攻。戦争勃発当初、TBS取材班は他の日本メディアに先駆けて、複数チームによる現場取材を継続した。普段は中東がカバーエリアの須賀川も、急遍ウクライナヘ飛ぶ。要衝としてロシアが占領を狙っていると言われる、南部の街オデーサやミコライウの最前線からレポートした。放射能汚染の可能性もあるチョルノービリ原発では、残された様々な証拠から、ロシア軍が紛れもない侵略行為を行っていることを報告。非人道的兵器として国際条約で禁止されているクラスター弾が市街地で炸裂した証拠も集め、兵器の残虐性を伝えた。

    森は静かだった。高い針葉樹が太陽の光を遮り、夏目前だというのに水気を含んだ空気は重く、動いていないとジワリと寒さが身に染みてきた。人気のないまっすぐな道路は森の中を突っ切り、ある場所へと繋がっている。

    チョルノービリ原発。かつてはチェルノブイリ原発と呼ばれた。日本メディアでもウクライナの地名はウクライナ語表記に統一されたわけだが、未だに「チョルノービリ」に慣れない人も多いだろう。ロシアによるウクライナ侵攻は、こんなところにまで影響している。そもそも歴史に残る重大事故を起こした原発が、旧ソ連のウクライナにあることを知っていた人も少ないだろう。事故を起こしてから40年近く。ゆっくりと廃炉に向けて作業が進められてきたこの場所が、突然戦場になると誰が想像しただろうか。

    「石棺」に覆われた4号機から、およそ10km、まだその姿は見えない。歩いていて気分が重いのは、重大な事故による放射能汚染の危険を感じているからではなかった。実際、首から下げている線量計の数値は、変わらぬままだ。問題は目の前の地面に残されていた、ロシア軍の戦車や機動戦闘車などの轍と、捨てられたロシア軍のレーション=軍の携帯食料 の残骸だ。キャタピラによってえぐられた草木はひしゃげ、掘り返された新しい土の周りには水が溜まっていた。ウクライナでの取材を始めて数週問、これまで前線近くでの取材はしていたものの、つい最近までロシア軍がいた痕跡を初めて目の当たりにして、私は侵攻の現実を突きつけられていた。

    帯同しているセキュリティアドバイザーがやや緊張した面持ちで話しかけてくる。

    「ここはこの間まで戦闘があった場所だから、安全が完全に確保されたわけじゃない。どこに不発弾やブービートラップがあるか分からないから、茂みなど足元が見えないところには立ち入らないように」

    この原発の周りには、未だに住んでいる人たちがいた。昔から周辺に土地を所有していた人たちで、事故後に制限が解除されたあと自宅に戻って生活を続けていた。公式には居住区として認定されていないため、電気やガスなどのインフラは制限されている。それでも、この土地に住み続けたいと思う人が事故から何十年経った今もいる。こうした人たちが、木々の間から見えるロシア軍の動きをウクライナ当局へ通報した。原発関連施設の作業員、スキルタさんもその一人だった。原発関連施設内の寮に住んでいたが、ロシア軍の侵 攻を察知し、森に逃れた。間一髪だったという。打ち捨てられた空き家に身を潜め、何台の戦車がどこに停まっているか、何人の兵隊が通り過ぎて、どの建物に入ったかを事細かくメモし、知り合いを通じてウクライナの情報機関に送った。拘束されたときに発覚することを恐れ、携帯電話に保存した写真やメモなどは送信した直後に削除したという。住民の中には軍用車両の種類を見分けられないおばあさんなどもいたが知識がある人たちが教えるなど、一致団結したという。

    住民たちの故郷への並々ならぬ思いが、この地域に侵攻したロシア軍を退けた。

  3. タリバン支配の実態、
    アフガニスタン
    AFGHANISTAN 20年間。アメリカにとって史上最長となるアフガニスタンでの戦争が終わった。アメリカ駐留軍の完全撤退から1年が経ち、タリバンによる支配が確立しつつある中、極限の貧困や薬物の蔓延、食糧危機など、深刻な人道危機がアフガニスタンを襲っていた。須賀川は米軍撤退直後から現地入りし、最も貧しい州のひとつバーミヤンでは、破壊された世界遺産のそばで極度の貧困から洞窟生活を余儀なくされていた住民の声を聴いた。ボーン・上田賞に輝く圧巻のアフガンレポートに加え、抑圧される女性の人権、国に巣くう薬物の闇など、アフガニスタンの深刻な社会問題の現実に迫る。

    「この間は本当に死ぬと思った。最悪を覚悟したのは初めてだ」

    私たちのアフガニスタン取材のコーディネーターを務める、エスマット氏。これまで戦争の最前線に何度も行き、タリバンによる自爆テロが目の前で起きて九死に一生を得るなど、何度も死線を潜り抜けて来た彼が、これまで見たこともないような厳しい表情を浮かべていた。彼は普段から非常に静かで、こちらから問いを投げかけない限り取材中はほとんど無駄話をしない。にも関わらず、この時ばかりは身を乗り出して話してきた。

    実はエスマット氏は別の欧米クルーとの契約もしていて、数日間、私たちから離れて仕事をしていた。この欧米クルーの行動に、エスマット氏は激怒していた話をかいつまむと、こんな経緯だった―。

    数日前、エスマット氏はカブール空港に到着した欧米クルーと合流し、すぐに取材許可証を取りに行くようアドバイスした。しかしこの時、すでに国連支援機関の幹部など重要なインタビューの予定時間が迫っていたクルーは、「街の中を撮影するわけじゃないから許可証は後回しにする」と助言を遮り、取材を強行した。ところが、この取材が思いもよらぬトラブルで長時間に及び国連の施設からホテルに向けて出発したのが深夜1時過ぎとなってしまった。

    ほとんど車も通らない深夜のカブールの街中を、ただでさえ目立つ防弾車両2台でホテルに向かう途中、タリバンのチェックポイントで制止させられた。エスマット氏いわく「この瞬間にヤバいと思った」とのこと。深夜に怪しい防弾車両2台、乗っているのは全員この間まで「敵」だった欧米人、トランクには大量の機材に防弾ペスト。状況としては、これ以上にないくらい最悪だ。タリバン戦闘員は、ジロリと車内をのぞき込み、一言。
    「許可証は?」

    もちろん、持ち合わせていない。しかし、20年間の戦争が終わったばかりで動乱が収まっておらず、「イスラム国」などの過激派が暗躍しているような状況で許可証を持たず深夜に行動していればタリバン当局は取材ではなくスパイ活動とみなす。エスマット氏は即座に車を降り、タリバン戦闘員の説得にかかった。しかし、相手は聞く耳を持たない。そうこうしているうちに次々と戦闘員が集まり、ぼそぼそと話し始めた。

    「神様は私たちに異教徒を殺すチャンスを下さったんだ。ここだと防犯カメラがあるから、“あそこ”に連れて行っちまえ。ああ 神様、感謝します。アッラ—フアクバル! (神は偉大なり)」

    アッラ—フアクバル。この言葉は、イスラム教徒が普段から、何かに驚いた時や感情を揺さぶられた時に使う言葉なのだが、昂った自爆テロ犯が起爆する直前に口にする言葉でもある。万事休す。戦闘員たちは銃の準備を始めていた。エスマット氏は、懇意のタリバン司令官の携帯電話を何度も鳴らし、深夜にたたき起こしてその電話を戦闘員に渡したことで何とか切り抜けた。このとき司令官が電話に出なければ、エスマット氏を含めクルー全員、ほぼ間違いなく殺害されていただろう、と振り返る。

    欧米クルーは、アメリカ軍が駐留している時から何度も取材に訪れていたベテランチームだった。そこにおごりがあったのだろう。しかし、どんなに混沌としている戦地であっても政情不安が続く場所であっても、地元当局が決めたルールはしっかりと守って取材をする。これは鉄則でもあるし、常識でもある。それでも不測の事態は常に起こる可能性がある。それを回避するために私たちは戦地訓練を受け、最悪の事態を想定しながら行動する。

  4. 最新武器兵器事情
    アイアンドーム

    アイアンドーム

    イスラエル軍が運用する、世界最先端の地対空迎撃システム。主にガザ地区から発射されるロケット弾を迎撃するために開発された。初めて実戦投入された2011年以降改良を重ねていて、世界で最も実戦経験を持つ迎撃ミサイルと言われている。これはアイアンドームに限ったことではなく、国際武器見本市では、イスラエル企業が自ら開発した兵器を「Battle field proven=実戦で性 能を確認済み」と売り込むのはよく聞く話だ。アイアンドームは現場に展開する発射ユニットと、迎撃対象をスキャンするコントロールセンターに分かれている。敵対するロケット弾を探知すると、コントロールセンターがAlなどを駆使して即座に進行方向や数を計算。民間被害が予想される、市街地に落ちそうなロケット弾のみを迎撃することで発射する弾数を抑え、コストの増大を避ける設計になっている。それでも一発数百万円はするため、わずか数万円のロケット弾迎撃のためのコストバフォーマンスは数字だけだと悪く見えるが、イスラエル軍幹部によると「ロケット弾が奪う可能性がある命の値段を考えればどんなコストも安いもの」。

    クラスター弾

    クラスター弾

    オスロ条約で国際的に使用が禁止されている、非人道的兵器。ロシアとウクライナは、オスロ条約に署名していない。そのため、ロシア軍による使用が強く疑われる攻撃であっても、100%ロシア軍によるものと言い切れない。クラスター弾はあくまで弾頭の種類を示すもので、様々なロケット弾や弾道ミサイルなどに搭載できる。作中では、ロシアによって放たれたとみられる、クラスター弾頭を搭載した多連装ロケットシステム「ウラガン」の残骸が紹介される。クラスター弾頭を搭載したロケット弾は、標的近くの上空で親弾頭を炸裂させ無数の子弾頭を放つ。子弾頭はスタビライザーによって空気抵抗を作り、信管が下を向くようにして落下。地面に触れたとたんに爆発する。広範囲にわたって致命的な被害をもたらし、無差別性が高い。また、場合によっては多い時で3割近い子弾頭が不発弾として残る。戦争が終わったあとも時には数年~数十年と、何世代にも渡って一般市民を危険にさらすため、極めて高い非人道性を持つ。

    GBU39精密誘導弾

    GBU39精密誘導弾

    アメリカの旅客機メーカ ー・ボーイング社の武器製造部門が開発した、GPSによる精密誘導爆弾。イスラエル軍が運用し、主にF16やF15などの戦闘機から放たれる。作中では、空爆現場から回収された破片を検証。刻印された兵器の識別番号を辿り、GBU39であることを突き止めた。ガザには、この他にJDAMと呼ばれる誘導キットを後付けした大型爆弾なども多く投下されていて、標的によって使い分けられる。GBU39は比較的少量の炸薬しか搭載できないため、一棟の建物や住宅などを狙うときに使われる。一方、JDAMを装着した大型爆弾は、地下トンネルなどを標的とするときに使われる。一般的にこうした航空機搭載爆弾は、炸裂の瞬間に破片が秒速3000m以上のスピードで飛散するため、標的となった建物にいたら即死する可能性が高い。

    M4自動小銃

    M4自動小銃

    NATO=北大西洋条約機構に加盟する各国が標準装備し、最も多くのロット数が出ている自動小銃の一つ。日本の自衛隊が運用するのも、この自動小銃と同じ5.56ミリの弾丸を使う。同盟内で銃の口径を合わせることは、有事の際の運用面で極めて重要(NATO内でも例外的に7.62ミリの運用もある)。アメリカ軍はもちろん、アメリカ軍の全面バックアップを受けていた、旧アフガニスタン共和国の軍や警察などの治安部隊も積極的に採用していた。アメリカ軍の撤退に伴いこうした治安部隊が瓦解したため、数多くのM4自動小銃やその他アメリカ軍の最新兵器がタリバンの手に渡っている。

HIROSHI
SUKAGAWA

須賀川 拓(監督)

1983年3月21日生まれ、東京都出身、オーストラリア育ち。
2006年TBS入社、スポーツ局配属。2010年10月報道局社会部原発担当、警視庁担当、「Nスタ」を経て、現職(JNN中東支局長)。担当した主な作品は、レバノンの麻薬王を追った「大麻と金と宗教~レバノンの“ ドラッグ王 ”を追う」、封鎖のガザで生きる起業家に密着した「天井の無い監獄に灯りを」、ガザ紛争の戦争犯罪を追及する『戦争の狂気 中東特派員が見たガザ紛争の現実』。その他にも、ベイルート港の大爆発後メディア初となる爆心地取材や、タリバン幹部への直撃インタビュー、アフガニスタンでのタリバン・パトロール密着等。最近はテレビでは伝えきれない紛争地の生の空気や、戦争で生活を破壊されてあえぐ一般市民の声をTBS公式YouTubeで積極的に配信している。2022年、国際報道で優れた業績をあげたジャーナリストに贈られる「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞。

追りくる「リアル」。
本当の戦争の被害者は謹なのか?

須賀川の紛争地レポートの特徴は、住民の声に耳を傾け、徹底的に現場を歩くことで、戦争の残酷な現実を克明に伝える表現力と分析力にある。そんな彼が一貫して批判するのが「戦争犯罪」だ。パレスチナではイスラエルによって閉ざされた街ガザに入り、200万人を超える市民がイスラエルの空爆にさらされる中で生活する様子や、ガザ側からのロケット弾の脅威にさらされるイスラエルの異常な事態をレポート。双方で、市民を平気で巻き込む無差別攻撃の責任者にその非人道性を問いただした。アフガニスタンでは、深刻化する女性人権問題の現実をタリバンに突きつけた。他にも、最も貧しい州のひとつと言われているバーミヤンでは破壊された世界遺産のそばの洞窟で暮らす家族の取材を通じて、人道危機目前とも言われる貧困問題をクローズアップしてきた。

行動年表~取材の足跡~

  1. 2006年

    TBS 入社 スポーツ局配属

  2. 2010年

    報道局着任 原発担当、警視庁捜査一課担当、「Nスタ」を担当

  3. 2011年11月マカオ

    大王製紙前会長の背任事件でマカオのカジノに潜入

  4. 2016年8月ブラジル

    リオオリンピック取材でマフィアが暗躍するファヴェーラ潜入

  5. 2017年2月マレーシア

    クアラルンプール 金正男氏暗殺事件を追う

  6. 2019年3月

    中東支局長着任

  7. 2019年4月ガザ

    ガザ・イスラエル紛争 実弾が使用されるデモの最前線を取材

  8. 2019年5月イラン

    安倍総理とハメネイ最高指導者の首脳会談

  9. 2019年6月UAE

    ホルムズ海峡での日本タンカー爆破事件 観光客に扮して現場を撮影

  10. 2019年9月トルコ

    トルコ軍によるシリア侵攻

  11. 2019年11月イラク

    イラク北部のクルド人難民取材で楽器を奏でる少女と出会う

  12. 2020年1月レバノン

    カルロス・ゴーン被告逃亡事件

  13. 2020年1月サウジアラビア

    安倍総理とムハンマド皇太子との会談

  14. 2020年3月イラン

    イラン議会選挙で入国、新型コロナ感染初期のテヘランの様子を伝える

  15. 2020年7月トルコ

    世界遺産アヤソフィアの“モスク化”の背景を追う

  16. 2020年11月レバノン

    ベイルート港大規模爆発で、爆発中心部“グラウンドゼロ”をメディア初取材

  17. 2021年5月ガザ、イスラエル

    ガザ・イスラエル双方の戦争犯罪を追及

  18. 2021年6月イラン

    大統領選挙で投票に来たザリフ元外相に直撃

  19. 2021年8月ガザ、イスラエル

    ガザ・イスラエル紛争の爪痕の調査報道

  20. 2021年8月カタール

    米軍撤退から1年「タリバンに問う」タリバン報道官シャヒーン氏直撃

  21. 2021年11月アフガニスタン

    バーミヤンの洞窟に住む家族やタリバンのパトロールに密着

  22. 2022年2月

    ボーン・上田記念国際記者賞発表

  23. 2022年3月ウクライナ

    ロシアによる“戦争犯罪”クラスター弾の使用を追及、チョルノービリ原発取

  24. 2022年6月スペイン

    シリア極秘政治犯刑務所の生存者の証言を集める

  25. 2022年8月アフガニスタン

    タリバン最高幹部インタビュー、国に巣くう薬物と貧困の関係を取材

監督:須賀川拓

撮影:寺島尚彦 宮田雄斗 渡辺琢也 市川正峻 
協力ディレクター:小松原茂幸
編集:牧之瀬勇人 泉妻康周 MA:深澤慎也 
選曲・サウンドデザイン:御園雅也
企画・エグゼクティブプロデューサー:大久保竜  
チーフプロデューサー:松原由昌  
プロデューサー:津村有紀
TBS DOCS事務局:富岡裕一  
協力プロデューサー:石山成人 塩沢葉子
製作:TBSテレビ  配給:KADOKAWA  
宣伝:KICCORIT
2022年/日本/102分/5.1ch/16:9

TBS DOCS

「DOCS」とは、“DOCUMENTARY FILMS”の略称
(海外ではドキュメンタリー作品を“ドックス”と呼ぶ)
2021年11月、TBSは国内を、世界を震わせるドキュメンタリー作品を展開するにあたり、新ブランド『TBS DOCS』を立ち上げた。ニュースには「続き」がある。『TBS DOCS』は、歴史的な事件や今起きている出来事、市井の人々の日常を追い続け、テレビでは伝えきれない真実や声なき心の声を、記者たちの熱い想いと共にドキュメンタリー映画として世の中に発信し続ける。本作品も新たに加わった『TBS DOCS』の今後の展開にご期待ください。