日本人特派員が見た
“ニュースを超える”戦争の真実
情報が氾濫する社会で、日々のニュースの波に押し流され埋もれていく真実。TBSテレビ特派員にして、今やYouTubeでも注目を集める“戦場記者”須賀川拓。
須賀川が抜群の行動力と分析力でガザ、ウクライナ、アフガニスタン、戦地を徹底的に歩き、人々を見つめ、浮かび上がらせる戦地のリアルは、私たちに「対岸の火事ではない」戦争の残酷な現実を突きつける。激動と混沌の時代に生きる私たちが今観るべきドキュメンタリー映画が誕生した。
テレビの枠に収まらない新時代のジャーナリストの八面六臂
遠くはウクライナから、近くは北朝鮮、台湾海峡をめぐる緊張まで、多くの人が戦争の危機を実感した激動と混沌の2022年。本作は、世界の紛争地を飛び回ってきた日本人記者の視点から“戦場の今”を映し出す。
『戦場記者』は2022年3月に開催したTBSドキュメンタリー映画祭で上映された「戦争の狂気 中東特派員が見たガザ紛争の現実」を基に、更なる取材を重ね、様々な地域から発信した戦場レポートを追加している。
監督は、TBSテレビに在籍し、現在ロンドンを拠点に世界中を飛び回る特派員・須賀川拓。JNN中東支局長というポジションながら、中東はもとより、ヨーロッパ、アフリカ、アジアと地球の約1/3という驚異的な広さのエリアをカバーしている。
「戦争に白黒はない」と、常に反対側からの視線も忘れない須賀川。彼は報道時間の制限ゆえに戦争の現実をごく一部しか報じられないテレビ報道の枠を超え、YouTubeやSNSも駆使して戦地の肌感覚とニュースの向こうに広がる光景や真実を、危険エリアから撮影クルーと共に日本の視聴者に届けてくる。スピード感溢れる怒涛のレポート、ホンモノの紛争地のヒリヒリした緊張感を伝える語り、筋書きのない意外性に満ちたYouTube配信は、従来のニュースファンだけでなく若い視聴者も取り込み、平均30万回再生以上の人気コンテンツとなっている。彼のチャレンジはテレビジャーナリズムの新しいカタチと言えよう。
フェイクニュースが横行する世界
日本から遠く離れた現場で
事実を目撃している
ひとりの日本人がいる―。
戦争が続くウクライナでは、クラスター弾が降り注ぐ南部の街ミコライウの住民や、ロシア軍の占拠で放射能汚染のリスクが激増したチョルノービリ原発の職員に取材し、ロシアのプーチン大統領が「ネオナチからの解放作戦」と主張する“軍事作戦”が、紛れもない侵略・破壊行為であることを示した。本作は、普段我々が触れる国際ニュースだけでは知りえない、圧倒的なリアル、真実を映し出す。
また、普段テレビや動画では見られない“平時”の須賀川に、権威ある「ボーン・上田記念国際記者賞」を受賞したスター記者の葛藤や、戦地に足を運び続ける思いも語らせる。
彼は異国の地で何を感じ、何を考え、何を我々に伝えようとしているのか?
我々が住む日本から遠く離れた現場で悪戦苦闘するひとりの日本人の瞳に映るものとは一。







いつ衝突が終わるのかも分からないパレスチナ。中でもイスラエルによって封鎖された街ガザは、イスラエルに対する憎悪に加え、実効支配するイスラム組織への不満もくすぶる極めて複雑な場所だ。イスラエル軍による日常的な空爆にさらされる狭小な街に、200万人を超える人たちが生活している。家を破壊され、家族や友人など大切な人を失う恐怖。それでもそこに住む人たちは日々を生きている。多くの場合、指導者たちによる“正義”のぶつかり合いで始まる戦争。しかし実際に日常や未来を奪われ、命を失う人の多くはそうした指導層ではなく一般市民だ。
ロシアのプーチン大統領が「ネオナチ制圧作戦だ」と主張するウクライナヘの侵攻。戦争勃発当初、TBS取材班は他の日本メディアに先駆けて、複数チームによる現場取材を継続した。普段は中東がカバーエリアの須賀川も、急遍ウクライナヘ飛ぶ。要衝としてロシアが占領を狙っていると言われる、南部の街オデーサやミコライウの最前線からレポートした。放射能汚染の可能性もあるチョルノービリ原発では、残された様々な証拠から、ロシア軍が紛れもない侵略行為を行っていることを報告。非人道的兵器として国際条約で禁止されているクラスター弾が市街地で炸裂した証拠も集め、兵器の残虐性を伝えた。
20年間。アメリカにとって史上最長となるアフガニスタンでの戦争が終わった。アメリカ駐留軍の完全撤退から1年が経ち、タリバンによる支配が確立しつつある中、極限の貧困や薬物の蔓延、食糧危機など、深刻な人道危機がアフガニスタンを襲っていた。須賀川は米軍撤退直後から現地入りし、最も貧しい州のひとつバーミヤンでは、破壊された世界遺産のそばで極度の貧困から洞窟生活を余儀なくされていた住民の声を聴いた。ボーン・上田賞に輝く圧巻のアフガンレポートに加え、抑圧される女性の人権、国に巣くう薬物の闇など、アフガニスタンの深刻な社会問題の現実に迫る。